セレンディピティの逃亡劇 [4]








ガタン、ガタン…列車が走り出したのを悟る。ふ、と窓から見る景色はとても寂しく見えた。これが夜のせいならいいけど、きっと違う。



こうした時、私はいつも「後悔」というものと闘っているに違いない。果たして本当にこれでよかったのか、これが求めていた未来だというのか…何故、そんな事を自問自答しなくてはいけないのかすら分からないのに。







「おい、何でそんな暗い顔してるんだよ」

「え?」



いつの間にか目の前にマルフォイが居て、横には今夜泊まるらしき部屋がある。どうやらあんなバカげた考え事をしているうちにここに着いたようだった。



「あなたの気のせいでしょ。それよりここが…今夜泊まる部屋?」



何気なく話を反らして「302」と書かれた部屋を見つめた。それにしても高そうな部屋ね。こんなとこに泊まれるのは金持ちしかいない。でも、やっぱりマルフォイよね。きっとすごい金使って…



「は?何言ってるんだ?そんな高そうな部屋に泊まれるわけないだろう?」



だけどマルフォイは頭がおかしくなったのかと言わんばかりの表情で私を見てきた。



「え…?じゃあ今夜はどこに…」

「だから、普通の席に座ってそこで寝るんだよ。大体これは列車だろ?わざわざ部屋なんて取るほど僕は金を持ってない」



………。なるほどね、完璧に一族と縁を切ったというわけかしら。これもすごい「事」だと思うわ。だって昔から何よりも家柄を大事にしてきた彼ですもの。しかもそのプライドとやらをたった一人の「穢れた血」の女のために捨てちゃうなんてね。ある意味ニュースにもなるような話じゃない?











「マルフォイ」

「何だ?」

「…もうちょっとマシな席は…」

「ない。我慢しろよ。これでも普通席なんだから」



こ、これが普通席ですって!?このオンボロ椅子が!?……前後撤回。私も偉そうに一人でカッコつけてる場合じゃないわね。ああ、もう!これだから夜の列車は嫌いよ。ホグワーツ行きの列車の何十倍も最悪。マグルより酷いわ。しかもさっきの高そうな部屋との差は何かしら。差別!?金のない奴らはここで十分だとでも!?



「…グレンジャー、何でそんな怖そうな顔…」

「黙って。こんなに最低な出発だとは思わなかったのよ。さっさと寝て夜明けになったら空港に行きましょ」

「…ああ」



そうよ。こんな列車とは早くオサラバしたいわ。よく見れば窓だって汚いし、掃除してるの?ハグリットには悪く言うつもりはないけど…なんでこの列車なのかしら。これしかなかったの…?



腕時計を除けば時刻は3時30分。多分7時くらいにはマグルの駅に到着するはず…。あまり睡眠はとれそうにもないけど、まあいいわ。だってまだ「追っ手」は来てないみたいだものね。まるで指名手配犯になった気分だわ…。












※ハマさん怖い…。